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モビルスーツって?

1979年制作の『機動戦士ガンダム』において初登場したモビルスーツは、1972年の『マジンガーZ』以来のロボットアニメに登場するロボット達とは大きく異なる描かれ方をしていた。それまでのロボットアニメに登場するロボットは、いわば特撮番組などにおけるヒーローと怪獣を、ロボットと敵役ロボットとに置き換えたものであった。これに対して、『ガンダム』はモビルスーツを現実の世界の戦闘機や戦車と同じような兵器の一種として描いたのである。
例えば、『機動戦士ガンダム』で最も数多く登場したモビルスーツ・ザクは、それまでのロボットアニメの敵巨大ロボと根本的に異なり「同型機が何度も、かつ同時に複数登場する」という点で画期的であった(『新造人間キャシャーン』のアンドロ軍団のように、量産型の登場例は全高2メートル程度ながらも既にあった)。それまでの敵ロボットは毎回毎回外見も行動も異なるものが一機ずつ登場していたのに対し、『機動戦士ガンダム』第1話から第11話までの間、敵側のモビルスーツはいわゆるザク、旧ザク、そしてシャア専用ザクだけで通したのである。その後も、現実の歩兵や戦車・戦闘機などが複数編成で運用されるのと同様に、ザクは同じ機体が同時に複数登場するのが常とされた。またザクの武装はマシンガン・バズーカといった実在の歩兵用火器をモビルスーツの大きさにしたものであり、怪獣のような火炎や怪光線で攻撃してきた従来の敵ロボットとはこの点でも一線を画していた。外観も、商品化が予定されていなかった事もあって、大戦中のドイツ軍兵士をイメージさせる兵器らしさを強調したデザイン、戦車などの軍用車両を思わせる緑系のカラーリングとなっていた。、ちなみにこの事により、高年齢層の視聴者には主役機のガンダム以上の人気を博す事になる。
ザクに比べて、主人公アムロ・レイが搭乗する主役機ガンダムは、ザクと比べて性能は多少は良いが桁外れに強かったわけではない。ビームライフルや頑丈な装甲といったアドバンテージはあったものの、敵のパイロットの腕前や戦術により、しばしば苦戦を強いられている。また、敵側にもグフやドムといった新型モビルスーツが登場するにつれ、機体性能の差も縮まっていった。
こうした「巨大ロボットを現実の兵器と同じに扱う」という、従来のロボットアニメと一線を画したコンセプトは、多くの追随作を生み、一大ジャンルに発展していった。
こうした路線はその後の多くのロボットアニメで洗練され、主役メカが存在せず敵味方が同じ工業製品の量産機で戦うという内容の『装甲騎兵ボトムズ』でピークに達する(『リアルロボット』という呼び名を作ったのは『ボトムズ』の監督の高橋良輔であるとされる)。
当初は宇宙を舞台にしたリアルな物語を作ろうとしていた『機動戦士ガンダム』の企画時に、本来は登場させるつもりはなかった巨大ロボットをスポンサーの意向により登場させざるを得なくなった際、スタジオぬえの高千穂遙が、ロバート・A・ハインラインのSF小説『宇宙の戦士』の一読を企画部長の山浦栄二に薦めた。「リアルな人型の兵器が存在してもおかしくない」と感じた総監督の富野喜幸(現・富野由悠季)をはじめとした制作スタッフは、当初はその「パワードスーツ」のアイディアを元に全高2m程度の強化装甲服を物語に使うつもりであったが(「モビルスーツ」という名称はその名残である)、スポンサーからどうしても巨大ロボットを出さなくては駄目だと要求されたため、戦闘機と同サイズである身長18mのロボット、つまりマジンガーZと同じ大きさのロボットを出すこととなった。当然、現実的な兵器論としてはこの様に巨大なものは役には立たないことは分かっていたが、当時のアニメロボットの主流は50m〜100m程度であったためこれでも十分にリアルな描写ができると判断され、しぶしぶ企画に登場させることにした。だが実際に企画を進めてみるとリアリティのある巨大ロボットは非常におもしろい演出ができることがわかり、結果的に『ガンダム』は『マジンガーZ』とも『宇宙の戦士』とも違った新天地を切り開くことになる。モビルスーツという兵器の概念は、こうして生み出されることになった。 当初は、物語の最後まで敵側のモビルスーツはザクのみで通す予定であった。しかし視聴率低下によるテコ入れから複数の目新しい敵キャラクターとして新型機を登場させざるを得なくなり、さらには非人間型の怪獣的なモビルアーマーまで顔を出すことになった。これらの登場はリアルな世界観を破壊してしまうのではないかと最初は懸念されたものの、現実の戦争でも戦況の変化と共に新型兵器が次々と戦線に投入されることは全くおかしな事ではなく、あくまでリアリティをそこなわない程度に抑えられて物語にうまく華を添えることになり、ビジネス的にもバラエティに溢れたキャラクタービジネスの大成功へとつながることになった。
初代ガンダムはロボットアニメというジャンルに、『宇宙戦艦ヤマト』で見られたような戦場を舞台とした人間ドラマの要素を取り込んだ初の作品であるといわれる。戦場で相対する人々の人間模様、特に成長途上の少年少女達が多く登場し彼らの成長が作品の柱になっており、また物語後半に登場する重要なテーマ「人類の革新『ニュータイプ』」という存在の意味や意義を描くことに主眼をおいており、モビルスーツの華々しい活躍は作品を彩っているものの、それら重厚な物語に水を差すようなことはない。
なお「モビルスーツ」以降、ロボットアニメでは登場する巨大ロボット兵器を単に「ロボット」と呼ばず、「重機動メカ」「ウォーカーマシン」「オーラバトラー」など、各作品が世界観に沿った固有の総称を設定する事が慣例となっている。富野によれば、現場でもロボットではなくモビルスーツと呼ぶ事を徹底したという。

キャラクターとしてのモビルスーツ

モビルスーツはキャラクターの一種としても非常に成功した部類である。『機動戦士ガンダム』の本放送は、そのリアリティを重視した物語が従来のロボットアニメとあまりに異質であったこともあって当初は視聴率が今ひとつ振るわず、またメインスポンサーであったクローバーが発売していた玩具の売り上げが不振であったために終盤近くで打ち切りとなってしまった。その後1980年にバンダイからガンダムをはじめとしたモビルスーツのプラモデルが発売され、価格の手ごろさなどから当時の子供達に絶大な人気を博した。やがて「ガンプラ」と呼ばれるようになったこれらのプラモデルの人気と、ドラマ性を重視した物語の評価とが相まって『機動戦士ガンダム』の再放送の視聴率は非常に高いものとなり、そして劇場版映画として再編・上映され大ヒットとなった。ガンプラは子供向けの簡便な低価格キットから高年齢層向けに凝った作りの高価格キットまで幅広く展開されている。四半世紀を経た現在でも続編作品の登場機体に加え、いまだに初代ガンダムやザクの新型キットが発売されるなどその人気は全く衰えていない。
ガンプラ以外にもフィギュアなどが発売され、またモビルスーツが登場するコンピューターゲームも、その操縦を楽しむアクションゲームやこれによる戦略を楽しむシミュレーションゲーム等多数が制作されている。子供向けやファン向け以外でも、一般の大人向けの商品のキャラクターとしてもモビルスーツは人気がある。
またモビルスーツを2〜3頭身程度にデフォルメした『SDガンダム』シリーズも高い人気を持つ。これらは本来のモビルスーツをコミカルに表現したもので、体型以外の設定はそのままにコンピュータゲームに登場したり、あるいは本来のガンダムシリーズを離れて全く新しいキャラクター・世界観を構築したものもある。

モビルスーツのデザイナー

『機動戦士ガンダム』においてモビルスーツをデザインしたのはメカデザイナーの草分けである大河原邦男である。実際の現場では監督の富野由悠季やキャラクターデザイナーで作画監督の安彦良和によってもデザインの提案や修正がおこなわれている(初期デザインのガンダムには鼻と口があったのだが、安彦が異議を唱え、現在のようにマスクを付けているかのようなデザインとなった。また、青をベースとしたカラーリングだったのを、白をベースとするよう提案したのも安彦である)。さらに、番組中期以降の登場メカの大半は富野によってラフデザインがおこされ、それに比較的忠実な大河原によるフィニッシュワークが行われているため、基本デザインは富野によるものと言っても過言ではない(『伝説巨神イデオン』でも同様のことが行われた)。ガンダムブーム・ガンプラブームによって「メカニックデザイナー(メカニカルデザイナー)」という職種が注目されるようになった。
以降のガンダムシリーズにおいても、永野護や出渕裕、カトキハジメなどといった多くのメカデザイナーが参加している。アメリカのインダストリアルデザイナーのシド・ミードも『∀ガンダム』に参加したことがある。漫画家の鳥山明も自作品内でオリジナルのモビルスーツをデザインし登場させた。

モビルスーツの設定付け

『機動戦士ガンダム』がアニメファンの人気を獲得する中で、その世界観に関する考察や様々な後付け設定の創作が行われている。例えば制作スタッフとラポート社発行のアニメ雑誌「アニメック」編集部との交流により、モビルスーツには実在の兵器に似せた型式番号が割り当てられるようになった。例えばガンダムには「RX-78」、ザクには「MS-06」といった具合である。モビルスーツの型式番号や名称は、スタジオぬえが係わった、みのり書房発行の雑誌「月刊OUT」別冊『GUNDAM CENTURY』により、「RX-78-2 ガンダム(2号機)」「MS-06F ザクII F型」と、また旧ザクやシャア専用ザクも「MS-05 ザクI」「MS-06S 指揮官用ザクII」とより詳細に設定された。さらに最初の劇場版公開当時、講談社のムックで劇中には登場しなかったバリエーション機が創作され、これは後にGUNDAM CENTURYで生まれた設定を加えて拡大し、バンダイの『モビルスーツバリエーション』 (MSV) として商品展開、ガンプラなどで人気を博した。これらはアニメの制作スタッフによるものではなかったが、ずっと後に作られた作品の劇中に登場することで、公式的な設定となっていった。
また、当初モビルスーツによる白兵戦を必然のものとするために、レーダー等を使用不能にする粒子として創作されたミノフスキー粒子についても、『GUNDAM CENTURY』などにより設定が拡大し、劇中の様々な兵器などの設定付けがおこなわれた。例えばビームライフルなどを実現するメガ粒子、いわゆるバリアを実現するためのIフィールドジェネレーター、空中に大型の機器を浮かべるためのミノフスキークラフトなどである。これらは後にミノフスキー物理学という架空の科学体系としてまとめられている。モビルスーツが人型をしている理由についても、手足を動かす際の反作用で機体の向きを制御するAMBACという概念が創作されている。
こういった詳細な設定はそれ自体でファンを楽しませるものとなると同時に、後に作られたロボットアニメにも詳細な設定付け、特に「人型有人兵器の名称とその存在理由」を考証する必要性を生み出した。
この点については、監督である富野自身が、かつては「大型の人型汎用ロボットは、その人型ゆえに人間と同等の汎用性と実用性がある」という素朴な解釈を披露することが多かったが、最近のガンダムエース誌での対談においては「背景は人間の戦闘である、という事を表す記号として、あえて人型にこだわっているだけ」という主旨の発言が多い。かつて作中の人物にも「あんなの(足)飾りです」と言わせていた。

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